するするとあたしの手から逃げ出して、誰にも納まらないのは、どうしてなの? 考えてみれば、いつだってそうだったよね。って考えなくてもあたまにポンポン浮かんできてる。あたしは、あんたが死ぬほどすき、だったんだよ。あんたもすきでいてくれた んだよ、ね?だけどさ、なにかあたしたちに違いがあったのかな?きっといっぱいあったんだんね。あたしは、ずっと違いなんてないって思っていたいのに。




銀時はまた浮気した。もう毎度まいどのこと、って自分でいうと悲しくなるけど。 この前おたえちゃんから電話がきて、一週間前くらいかな?(銀さんが違う女と歩いてたわよ)って。 その日は、銀時が久しぶりにパフェでも食べに行こうって誘ってくれれたから、あたしは少し おめかしして銀時の家を訪ねたのに。そしたら、(今から神楽の酢昆布かってくる)だって。誘ったのは 自分なのに、なんで神楽ちゃんを優先するのよ。酢昆布買うお金あるんだったら、あたしに何かプレゼント しなさいよ、って思ったけど言えるわけないじゃない。しょうがないから、新ちゃんとファミコンなんか して遊んだ。意外とハクネツしちゃったけれど、やっぱりサミシイって思った。そしたら、その電話がきて、 あたしは全然平気!って答えて電話をきったけれど、なんだか惨めでしょうがなかった。新ちゃんは気まず そうに俯いていたけれど、顔をあげてあたしを見つめて、さん、って。あたしの名前を呼んだ。その声は酷く優しくて、また自分が惨めになった。 あたし、新ちゃんみたいな人と付き合ったほうがいいのかな?
何日かまえだって、あたしは銀時とあんみつたべてて、そしたらもう暗くなっててて、(俺は仕事があるから)ってバイバイのキスをして別れたのに、 そのすぐ後にうちにお登瀬さんがきて、(あいつはやめときな、また違う女とキスして)そこであたしはお登瀬さんの言葉を遮って、ありがとうございました。って 電話を下ろした。さっきまであたしといてキスをしたのに、もう違うひととキス、するんだね。もうお登瀬さんからの報告も4回目になるかな、みんなして、そんなこと 言わないで、どうして告げ口するのよ。あたしは、銀時と一緒にいられればいいのに、あたしと銀時を別れさせたいの?





、」
「別れて」





うそだ。あたしは一緒にいられればいいなんて思ってないでしょ。もう、1度思い出せば汚い思い出だけがあたしの中をかき乱す。何度振り切ったって、ぐるぐるぐるぐる、ああ、倒れそうだ。 それでもたまにきれいな思い出が出るのが悔しくなって、銀時がくれたかんざしを思い切り投げつけた。このかんざしは去年のあたしの誕生日に銀時がくれたもので、大きな赤い花がついたとても美しいやつ。 (お前に似合うと思った)って、どれほど嬉しかったかしってるの?今年の誕生日は、あ、明日だ。もう、美化された思い出だけしか出てこないのが悔しい。あれ、思い、出? けれど、もう今度こそ許さないんだから。銀時は、あたしの名前を消えそうな声でよんだけれど、もう、遅いんだよ。でも、また許しちゃいそうなあたしはいたから、聞こえないフリをして、




「もう、ぜったいしねえから」





うそだよね。まだうそつくつもりなの?もう何度だってだまされてあげたでしょう?まだあたしを傷つけるつもりなのね。もう、むだ。 でも、涙があふれて止まらない。なんで悲しいの?ちがう、そんなんじゃない。どうしよう、とまれ、とまれ、とまれ!! 振り向けばきっとそこに銀時が立ってるんでしょう。そこには、ぎんときが。





「まってるから、もどってきてくれ」





振り向いちゃだめなのに、勝手に振りむいた自分に、もう銀時がいなきゃだめ、って思い知らされた。けれど、みたかった愛おしい人はどこにもいなくって。 やっぱり銀時はするすると逃げていくんだね。もう、おしまい。あ、雨だ。ポツリ、ポツリと振り出した雨はあたしたちの立っている場所を濡らして、一緒にいた時間 すら消してしまいそうだった。
これはあたしの?それとも銀時、の?








なまぐさい


約束